ブロムシュテットが三度登壇する月の、これはふたつめのコンサートだ。
プログラムは前半がオネゲル「交響曲第3番」で後半はブラームス「交響曲第4番」の二本立て。いっぽうに20世紀フランスのモダンな作曲家があって、もういっぽうには19世紀ドイツの古典主義者がある、そういう構成にみえた。とはいえ、ブラームスが「遅れてきた古典主義者」として吸った世紀末の空気は、オネゲルがそのなかで産声をあげた世紀末の空気でもあったようだ。
オネゲル「交響曲第3番」は「典礼風」と副題が添えられる。各楽章にはラテン語の標題があたえられている。 “Dies irae”, “De profundis clamavi”, “Dona nobis pacem” 、それぞれ「怒りの日」「深い淵から」「われらに安らぎを与えたまえ」という。しめやかなものであるが、それに釣りあう平穏をこちらの心のなかに用意することができずにぼくはあった。最後の一音が消え、ホールは沈黙したまま指揮者の腕が宙でかたまったままであるのをみつめて、何十秒の緊張がほどけてかれの腕がおりたときに拍手が爆発した。
ブラームス「交響曲第4番」は、前半のプログラムに比べるとよく親しんだ作品で、食べ慣れた味を食べるようにしてきいた。この日のコンサートマスターは川崎洋介さん、チェロ・セクションの筆頭には辻本玲さんがいて、このふたりが身体を前後左右におおきくつかって、音に霊をさずけるようにして弾くのをみた。