金曜の夜にNHKホールにコンサートにいった。チャイコフスキーのプログラムで、演目は「ロココ風の主題による変奏曲」「白鳥の湖(抜粋)」の二本立て。
霧雨に降られて傘をさしても全身がしっとり濡れて、すっきりしない気分でホールにはいって、待合室には身体を乾かす聴衆がたむろしているとおもいきや、そうでもなかった。しかし演奏がはじまるころにはホールはぎっしりという度合いだった。二階席の最前列でながめた。
「ロココ風の主題による変奏曲」はチェロをソロに据えた作曲で、ソリストはN響首席奏者の辻本玲さん。たのしみにしていたソリストのプログラムだったのだけれど、金曜日の夜までの一週間分の疲れがどっとでて、ホールの座席でおもわずリラックスしてしまって、眠ってしまわないようにとするほうに意識が向いて、音楽の細部に集中することができなかった。口惜しいことをしたとおもう。アンコールは辻本さんにN響チェロメンバーが加わって、ロマンチックな演奏を聴いた。カタルーニャ民謡の「鳥の歌」という曲で、編曲者は不明だという。
「白鳥の湖」がはじまるまでのインターミッションで、座席に座ったまま目をつむって仮眠したことにして、次のプログラムを待ち構えた。そのあいだにオーケストラは「ロココ風の主題による変奏曲」よりもふたまわり拡大していた。
「白鳥の湖(抜粋)」のプログラムは、序盤からおおいに盛り上がる聞きどころをおおく構えていた。ひとを踊らせる弦楽器のアンサンブルは明瞭で気分を軽くさせたし、各楽器のソロも充実していた。ファースト・バイオリン、トランペット、オーボエ、ハープ。抜粋とはいってもたっぷりした演奏時間で、それでいてハイライトがはっきりしているから、ライブで聴くにはオーケストラの機能がよくわかる演目だったとおもう。
肉体と気候のコンディションのよくないなかのコンサートで、もっとよく聴けたはずだと悔しがりたいポイントもあげればきりがないけれど、一週間のおわりのリラックスにホールをおとずれて、たしかにリラックスできたことはおぼえておこう。音楽は苦しむために聴くものじゃないわけだし。