秋分の日が絡む三連休にスカッと晴れる予報はみえなかった。

冬がはじまるまえに行楽に駆け込む、というにはまだ早いけれども、せっかく時間はあるのにバイクに乗れないのは痛ましいな。といって、はじめからそう簡単には乗らないつもりで、とにかく晴れた日を選んで、すこしでも雨がみえそうだったらライディングを控える習わしにこれまではしていた。

でもだんだんそうはいかなくなってきた。もっと乗りたくて、我慢がならなくなってしまった。とにかく乗りたい心がやすまらなくて、いてもたってもいられないようなめずらしいおもいで、三連休の初日の夜、小雨のなかバイクに乗った。代々木、渋谷を横切って皇居に抜けて、丸の内でひとやすみして、新宿、初台を抜けた。それでひとまず血の気をしずめた。次の日の未明にハッと目が覚めて、クールダウンしたマシンに防雨シートをかぶせたら、ちょうどそれからずっと雨だった。

そのあと連休の最後の日に、雨があがって、またいつ降り始めてもおかしくはないようにもみえつつ、地面は乾きはじめているのがみえた。天気予報も四時間くらいは降らなそうだから、よし、いってしまおうと、午前中のうちに走り終えるつもりで、首都高にのりこんだ。レインボーブリッジを走ってみたかった。

新宿線、八重洲線、KK線、湾岸線、深川線。三宅坂、有明、辰巳、箱崎。ビデオと地図をみておぼえた道のうえ、はじめて自分のからだをすべらせて、都会の低い天井をくぐり抜けるようにして走った。レインボーブリッジもわたった。風はあったけど、そこまでひどくもなかった。

羽田空港のさき、川崎浮島の大師のジャンクションを順序よく抜けるはずだったが、おもわぬ大師料金所なる知らない関所につかまって、うろたえた。道を間違えたとおもった。首都高を降りてしまったにちがいないと。実は、経路を違えただけで路線は間違えておらず、大師料金所はシステムの互換性だけのために取り残された、ほとんど形骸化した関所だということは、あとからわかった。でもすぐに停めて状況を把握することもできなくて、なにかを間違えてしまったんじゃないかと、ぼくは狼狽していた。

川崎からまっすぐいけば本牧ジャンクションで折り返してもどってこられることは知っていたけど、横羽線という道の名前は暗記できていなかったから、この横羽線こそただしい道だとはわからなかったのだ。やがて大黒という表記があらわれて、ここからならリカバリできるとおもって、とびこんだ。おもえば生麦ジャンクションだったのだとおもう。おもいだせば視野がせまくなっていたことに気づいて、もうすこし余裕をもたねばならなかったと反省もする。とはいえ、まず大黒パーキングエリアに逃げこんで、ことなきを得た。

すこしやすんだあとはまっすぐな湾岸線を走って、もういちどレインボーブリッジを走りたいとおもって、さっきとは逆向きにわたった。その先、あとは新宿線の方面に走っていけば帰れるのだけど、こんとは分岐にしくじった。たぶん三宅坂ジャンクションかな、左にいけば新宿線、というのを見逃して、また同じ道にもどってきてしまった。もういちどKK線をわたりなおして、三度目のレインボーブリッジにはいりなおして、こんどこそ新宿線への分岐をただしく通った。

もう帰ろうとおもってからが長くて、集中力を切らさないのがたいへんだったけれど、カーブの多い高速走行から無事に帰ってこられた安心感は満足の味がした。昼過ぎにはかえって、この日は160kmを走った。