三連休の初日に日帰りツーリングをした。富士スバルラインで富士山の五合目展望台まで駆け上がった。

一週間前から富士山の天気予報をまじまじとみて、この土曜日が三連休で最良の天気だと見極めて、金曜日に決心した。安全に往復することのほかに、渋滞をすっかり避けることを目標にした。どうやって渋滞を避けるか? 早くでて、早く帰ることに尽きる。

四時に起きて、日の出より早く五時に発車した。幡ヶ谷のインターチェンジに向かうと、前の車が三台くらい続けてランプに吸い込まれていった。こりゃあ混みそうだ、とおもったけれども、まず合流で目詰まりすることもなく、すいすいと走れた。西の空がゆっくり影を薄くしていくのがきれいにみえた。前へ前へと追い越していくほどの集中力はまだ準備できていなくて、左車線をとことこと流していくと、右側からいろんなバイクが先にいくのがみえて、あとから見送るのもいい景色だった。

石川パーキングエリアに六時、すこし休憩して、八王子インターチェンジから合流してきた、アメリカンバイクの縦列のいちばんうしろにくっついて、八王子ジャンクションの長いカーブで右車線だけが不思議と短い渋滞になっているのを、左からするっと抜けた。おぼえたてのブリッピングダウンシフトをここぞとばかりに練習した。彼らはずっとゆるやかに先導してくれていたが、あちらから右ルートに流れていったところでお別れになった。谷村パーキングエリアに七時、すこしストレッチをして、すぐ次の河口湖インターチェンジで降りる。コンビニでもうひとやすみしつつ、ヘルメットのシールドに虫がぶつかってしまったのを濡れタオルで拭ったら、かえって視界が曇ってしまって残念なおもいをした。

富士スバルライン。まず料金所までまっすぐな山道をずっと走って、記憶の地図をたよりに走っているから、先行車が一台もいないことにどきどきしながら進んでいくと、料金所。現金手渡しで支払って、後ろから乗用車が詰めてきているのでグローブをあいまいにつけたまま路傍にそれて、いちど立ち止まって装備を整えて、すこし深呼吸してからスタートする。一合目の最初の駐車場でさっそく止まって、まだ横から叩きつけるような朝の日差しにあおられながら、土色の富士山と青空のコントラストをみあげた。自転車でのぼっている二人組が、休憩するかすこし迷って旋回して、そのまま足をつけずにのぼっていった。二合目、三合目と走って、四合目のヘアピンを曲がり切ってすぐの駐車場でもういちど停車すると、もう雲海が下にみえる。走ると風が指先を冷やすが、空気がただちにつめたいわけではないから、日差しを浴びて一休みするとまたすぐに上にいきたくなる。そうして進んで、五合目。アップヒルが終わってからが長くて、いったいどこまで進めばゴールだろう、それともこのあたりの路傍に停めてしまうのがいいだろうかと迷いつつおろおろと進んでいったら、開けた展望駐車場に出た。誘導されていって二十台くらいのバイク駐車場の端に停めた。

八時半、山中湖をみおろす騒がしくない一角で、下で買ったお茶といなりずしで軽食にする。しばらくぼんやりうろついて、焼き立ての富士山メロンパンというのをひとつ食べて、一時間とすこしすごしたらもう満足で、山下りに打って出た。カーブ注意の案内板がそつなく配置されていて、ヘアピンカーブの渓谷には 30km/h まで減速推奨ともあるから、ブレーキをなるだけ使わずにそれに従えるようにギアを調整して走ってうまく抜けられると気持ちがいい。テンポよくおりていって、休憩はいらなかった。あっというまにもときた料金所についてしまった。

十時半、河口湖インターチェンジ。十一時過ぎ、談合坂サービスエリア。山のうえの快適さが嘘みたいな猛暑だ。フードコードで軽食にしたあと、野菜の販売所で買い物をして、中央道をのぼりはじめる。正午あたりの八王子ジャンクションをすいすいと進んで、渋滞知らずのまま高井戸インターチェンジを降りた。すると環八通りで大渋滞に巻き込まれて、荻窪までの道のりで蒸し焼きにされてひどい思いをしたのだけれど、あとは帰るだけだから気は楽でもあった。

往復で 260km 走って、これはいまのところ一日で走ったいちばん長い距離だ。富士山をおりたあとの高速道路で、暑いとおもってすこし急いでかえって疲れてしまったところもあるから、もうすこし余裕をもって走ればもうすこし長く走ることもできそう。富士スバルラインの終点で、いちにちの走行距離が 130km と表示されていたから、往復できっかりおなじ距離を走ったことになる。そこまで真面目ぶったわけはないのだけど、渋滞を避けようという気持ちが無駄をなくしたようだ。計画したとおりのコースを走って、アドリブに流れなかったことは、いい心がけでもあるはず。