東京文化会館の小ホールにコントラバスの独奏コンサートを聴きにいった。
- エミール・タバコフ/コントラバスの動機
- 細川俊夫/唄(ばい)
- テッポ・ハウタ=アホ/カデンツァ
- ペトリス・ヴァスクス/バス・トリップ
- ジュリアン・ツビンデン/バッハに捧ぐ
- 平川加恵/さくらさくら変奏曲 ※コントラバス版 世界初演
- 西田由美子/転生
- ヨハン・セバスチャン・バッハ/無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007(コントラバス独奏)
20世紀のレパートリーが続いて、あんがい現代音楽のうれしいショーケースだった。じっさいプログラムによると、独奏楽器としてのコントラバスの魅力を作曲家たちが発見するのはもっぱら20世紀まで待つのだという。コルレーニョやハーモニクスを筆頭とする特殊奏法の探求が、弦長のながいコントラバスを隠れた花形楽器として見出した。不意打ちの荒々しいノイズとおなじくらい、不意打ちに沈黙がひろがることも刺激的な演奏だった。現代作品をならべたあとにバッハを提示するのも格好がいい。
ホールは全席自由席で、開場からもぎりの列が長く伸びて、席は前列から順にぎっしり埋まった。このホールにきたのは一年ぶりで、そのときはシューベルトの室内楽を聴いた。
幣隆太朗さんは白と土色の細身の総柄シャツで装って登壇した。長めの休憩をはさんだあと、空色に白を染め抜いたシャツに衣装を替えてバッハを演奏した。ツビンデンの「バッハに捧ぐ」の終結部で BACH の音型が崩壊してしまう。でも崩壊したあとで、西田さんの「転生」を経て、無伴奏チェロ組曲を提示する。そういう流れを意識してプログラムを組んだと話されていた。
ソロコンサートをひらくのははじめての試みで、いままでにない極度の不安と不眠にとらわれていた。そうも話しておられた。やりきってきょうからは眠れそうと笑顔で話すいっぽう、第二回の企画があればぜひやりましょうと、晴れやかに宣言してもいた。プログラムにある作曲家のうち、細川さん、平川さん、西田さんは来場されていて、会場から拍手をおくられていた。
上野の最高気温は34度でじっとり湿っている。帰路はかき暗して激しい集中豪雨と5秒おきに空から岩が落ちるような大落雷。西武線の駅舎で雨宿りして本を読んだら小一時間があんがいあっというまだった。