母にたよられて野球をみにいった。神宮球場へ。
レプリカユニフォームを久しぶりにタンスから出して、先に入場していた母とは座席でおちあった。一塁側の内野席。試合前のセレモニーがはじまるより前について、スワローズの選手たちが一二塁間とライトフィールドのあたりにぞろぞろひろがってウォームアップしていた。
母は野球をみるのに熱心だったことはない。そうおもっていたのだけれど、子どものころはジャイアンツファンの祖父が野球中継をずっとみている家にいて、しかもそれは清原と桑田が甲子園で暴れていたころでもあったから、実は当たり前に野球の話題は身近にあったのだという。いちど球場に見に行ってみたいとおもったときに、ぼくが何度か神宮で観戦していたことをおもいだして、誘ってくれた。とはいえぼくも神宮球場にきたのは2017年以来はじめてだった。
スワローズとライオンズとの交流戦です。両者ともそれぞれのリーグの最下位。それでもスタンドは盛況です。スタメン発表、ラッパの音、応援歌。ノスタルジックなおもいになります。母は村上と源田だけわかるけどあとは誰もわからないと。でもあとになって、ああ山田も知ってる! と。
終わってみたらスワローズが圧勝したようなスコアでした。7−2。中盤まで小川と隅田が投げ合う投手戦で、中盤から徐々に両チームにチャンスが見え隠れして、それほどワンサイドゲームにもみえなかった。実際、ライオンズが先制点を効果的に作ったころ、スワローズはミスがおおくチャンスを殺してばかりにもみえたものでした。しかし終盤にかけて、フォアボールに乗じてたたみかけてチャンスに長打を打った側と、満塁の場面を繰り返し作りながら最小のスコアしか獲得できなかった側で、明暗がわかれたようです。
スワローズは、ドミンゴ・サンタナが逆転タイムリーを打って、ホセ・オスナがダメ押しのスリーランを打ちました。複数年稼働して人気のある彼らをじっくりみるのも実は初めてでした。なにせ最後に球場に来たときにはまだバレンティンが現役でした。ふたりは助っ人らしい長打力だけでなく、それをチャンスの場面で発揮できるところに、人気のゆらいがあることがよくわかりました。特にオスナの本塁打はレフトスタンドに真っ直ぐ向かってうつくしかった。すっかりファンになりました。山田に替わって守備固めで出てきた武岡がホームランを打ったのもよかった。
ライオンズは、スタメンの栗山が先制タイムリーを打った。源田は複数安打に盗塁もあった。代打中村はそのまま守備についた。なにより隅田がいい投手でした。失点こそおおくついてしまったが、見た目の結果よりもずっと攻略しづらい投手にみえました。緩い球で打たせて取る老獪なピッチャーかとおもってはじめの数回をみていたら、やがて目の覚めるような速球を要所に利用しはじめて、緩急の差に打者たちはてんてこ舞いになっているようにみえた。ピンチで続投していたらどうなっていただろうとおもいます。
むかしは高すぎるようにみえた内野席がいまではそんなに高くみえなくなっていたことに、時間の流れを感じます。スタンドには両チームのファンが混在して、おもいおもいに応援歌をうたったり、選手の名前を叫んで檄したり、おおきな望遠レンズつきカメラを構えて好プレーの瞬間をじっと待ったり、ビール飲んでおしゃべりしたりしています。いろんな楽しみかたがあって、いっそ試合をみてさえいなくても、いい天気のいい空がいい雰囲気をつくっています。こんなにたのしいならもっと観戦しにきたい、そうおもって、次にやってくるのはいつになるでしょうか。