NHKホールでN響の定期演奏会を聴きました。メンデルスゾーンづくめのプログラムです。

セブンイレブンで発券したシーズン券を家におきわすれて、代々木公園で忘れ物に気づきました。開演まであと1時間の余裕はあるが、いちど家に帰ってもういちど出直す時間があるかどうかはこころもとありません。これでだめだったらあきらめようとおもって、ホール入り口の係員さんに事情をつたえることにしまいた。するとそんなことはよくあることで目くじら立てるほどのことでもあるまいというくらいになめらかに、名前と電話番号で認証して、チケットを再発行してくれました。なんとありがたいこと。

そんなふうにしていちど諦めかけた心の動きもあったからでしょうか、すばらしい演奏会に聞こえました。「夏の夜の夢」より「序曲」「スケルツォ」「夜想曲」「結婚行進曲」というシリーズが前半です。すぐれて記憶に残っていること、「序曲」の飛び跳ねるように粒立って上下するバイオリンのリズム。「結婚行進曲」のストイックさと開放感の同居した推進力。後半は交響曲第5番「宗教改革」です。第2楽章のメリハリある様子は口ずさみやすく帰り道もこれをおもいだしながら歩きました。とはいえそこだけがとくにすぐれていたというのではなくて、全体ひとかたまりがよい演奏でした。音の景色があっというまに通り過ぎたというぐあいです。

二ヶ月前のある日曜日に羽田空港のホテルに泊まりました。テレビをなんとなくつけて、ルイージが振るN響がレーガーの「モーツァルトの主題による変奏曲」をやっているのをみた。いい演奏でした。レーガーを知らずにはじめてそれを聴いて、いい音楽は自分の知らないところからやってくるようにみえたものです。

おなじように、メンデルスゾーンもあまり知らずに演奏会にゆき、いい音楽があることを教えられて帰りました。たのしく気分のいい金曜日の夜でした。