パートナーはアメリカに経つ直前に、近所の診療所を受診した。ぼくはそこを通りかかったことがあるだけで、みずから訪れたことはなかった。よく患者の話をきいて安心をもたらす診察をしてくれたから、盲腸のこともそのお医者さんに相談してみるといい、といわれて、きょうのうちにたずねてみた。
問診票に、痛みはいちど消えたけれども再発することが不安でぬぐえないと書いた。服薬を止めて二日目で、こころなしか下腹部がじわりと重さをまとうこともこわい。きょうの医師はそういう不安を黙って話させてくれた。
抗生物質を追加で処方してもらった。もし夜や休みの日に腹痛がぶり返したら、迷わず救急車を呼ぶようにとも認めてもらった。プレモーテムが成立したと感じて、心理はやわらいだ。もしかすると、ぼくはただ話をきいてもらいたかっただけなのかもしれない。
そうはいっても、帰国する直前には押されてもすこしも痛みがなかった下腹部を、いま押してやると痛みがあることは事実である。しかも、痛みの集中点は右にずれていて、盲腸の位置にほかならない。思いすごしやパラノイアであればいいのだけれど、また悪くなりそうな予感から自由になることはまだできなさそうだ。