スター・ウォーズの第九作をみた。

ふたたびはじまってしまった物語になんとか決着をつけるために長い因縁を総動員して、それでどうにかこうにか話が終わることになる。観客としても、なんとか付き合いきれたという安堵を持っている。

レイの葛藤の根源は彼女がシスに堕ちることとされるが、その苦しみは十分には描かれなかったようにおもう。アナキンのようにはならないという意志があることはほのかに推察できるが、そのアナキンも最後にはジェダイとして帰還したという帰結は忘れられているようで、どうも悲観主義がすぎるような気がする。彼女の潜在能力が『ファントム・メナス』からの三部作で語られたアナキンの実力よりもはるかな高みにあるとは語られていないだけに、その不安ははなはだしい杞憂でないかと思わされる。

対して、レジスタンスは楽観がすぎて、どうにも緊張感がない。仲間や家族のつながりがあれば最後にはなんとかなる、というのは力強いメッセージであるが、それが序盤から強く出すぎてしまっていることはメッセージの効果を薄めている。期待が裏切られて破滅に向かうという緊張感があるならまだしも、これがシリーズにひとまずの完結をもたらすものだと期待して観る目には、彼らがみずからの善性を過剰評価していまいかとみえる。

カイロ・レンがレイとの決戦に敗れたあとに、過去のつながりに無言の励ましを受けるようにしてベン・ソロとして復活するところは、すぐれてよい。父の記憶と対峙して、決意したようにライトセーバーを海に投げ捨てる場面は、暗い空と荒れた海を背景にしながら、その不確かな風景はそのままに成長の一歩を踏み出す勇気をあらわしているようで、印象深い。彼がレイを救助しにエクセゴルにたどり着いて、ふたつのライトセーバーのひとつを受け取る場面も静かな熱気にあふれている。それだけに、レイの最後の戦いを準備するためにはここでもう用済みとばかりに、暗黒卿によって一時はかんたんに始末をつけられるということが興ざめだった。すべてが済んだころになって再登場して、使命を果たしたようにして消え去るのも、彼のような魅力的なキャラクターにあたえられたけじめとしてはあっさりしすぎていた。

総じて大味なアクションと超常現象の映画となっていて、そのエッセンスは第一作からいい意味でなにも変わっていないのだけれど、技術の進歩がストーリーテリングを陳腐にしているところもあるのだろう。第一作に肉薄する続編はシリーズを通していくつかあったにせよ、それを超克することはどうにもかなわないということもまた明らかになっている。とはいえ、最初のひとつを生み出した創造力がこのようにますます際立つことは、悪いことではない。