スター・ウォーズの第七作をみた。
『ジェダイの帰還』の後日譚を描いて、滅んだはずの帝国と反乱軍(反乱とはなにか)の抗争が続いているということ。「前より強力なデス・スター」という三番煎じのアイデア。老人たちのいくぶん辛気臭いダイアローグ。そういうものを取り揃えて、アナクロニズムにはまるポイントはいくつもあった。そういう意地悪な目で観る客にとっても、まっとうに楽しい体験を与える作品として成り立っていた。
おもうにカイロ・レンの存在感がそれを支えている。エネルギー武器の攻撃を停止させるほどのしたたかなフォースの持ち主としてまずは登場する。あるいはヨーダよりもフォースに恵まれているのではないかと戦慄さえもするシークエンスである。ところがのちには、集中底知れなさを将校からの報告に激怒して、感情のままに戦艦の機材をライトセイバーで破壊する様子に、どこか子供っぽいところを感じさせる悪役としても映し出される。やがて BB-8 の代わりにレイを拘束するも彼女のフォースによって洗脳をはばまれ、最高指導者にそのミスの挽回を約束したところで、いっそう悪いことにレイに逃亡されるところもよい。激怒して大暴れするレンは、やっぱり子供のようで滑稽にみえるのだが、それが悪役の姿に泥を塗っているというよりも、むしろ役柄に魅力を注ぎ込んでいる。みずからを鼓舞するようにして胸をたたきながらレイとの戦闘に臨むところも、戦闘経験の浅い彼女に返り討ちにされてかろうじて一命をとりとめるところも、画面にうつるすべての場面で印象に残る演技をしていた。
カイロ・レンという豊かな実りを除くと、やっぱり最初の三部作を変奏しているだけという印象はあった。カイロ・レンとソロの対話と結末は、ダース・ベイダーとオビ=ワンの関係を再現しているようだったし、 BB-8 は R2 の生み直しという様子だったし、デス・スターの壊しかたもいつものとおりという感じだった。
とはいえ、強くなって再々登場したデス・スターにはいいところもあった。いちじるしいエネルギーでいちどに星系を一網打尽にする攻撃の描写はあまりにも現実離れしていて興ざめになりかけたが、後半になってそのエネルギーは太陽をまるごと飲み込むことによって調達しているという馬鹿げたアイデアが提示されるにつけて、奇想天外譚として素直にたのしみはじめることができるようになったきがした。
ハン・ソロがにわかにカイロ・レンに丸腰で歩み寄っていって説教臭い話をするのは肩透かしの感があった。もっとも、老いた男性は得てして身の程を図り違えてそういう蛮行に臨むこともあるのだろうなとだけおもう。まだそこまで老いてはいないから他山の石にもしようはないが。