ポール・バーホーベンの SF 娯楽映画をみた。

ファシスト政治が巨大な虫の形態をもった地球外生命体を生存圏確保のために駆逐しようとする。市民権は軍役と不可分になって、民主主義は滅んでいる。そういう世界のなかに、アメリカ合衆国のハイスクール文化とそれを生きる若者たちを放り込んで、戦争の滑稽さをアイロニカルに描いている。

アイロニーとは、それと明らかにわかるように演出すると陳腐になる反面、隠微なやりかたで演出すると冗談とあつかいづらくもなる。この映画は後者に属して、あさはかな軍国主義を真剣に描くことで、それが冷笑の対象となっているのか、それともそれを支持しているのかの境界がぼかされている。アイロニーとわかって観るものにはアイロニーとみえるし、不快におもって観るものには不快にみえる。

そういう両義性があって、なかなかあつかいづらい映画であるようにおもった。皮肉というものに内在するミスコミュニケーションこそが露骨にあらわれている。もちろんそれは製作者たちの知性とユーモアを反映しているわけであるが、そのギャグがぎりぎり成立しているのか、はたまた失敗に終わっているのか、どちらともとれる危険なバランスは他にないものであると感じた。