上野の国立科学博物館にワイルドファイア展をみにいった。

火災によって物質が破壊されるというのを悲劇的におもわせるのではなく、むしろ森が火によって変成を被ることでかえって長く残るようにもなりうるという視座の回転を手に入れた。地球上のどこかではいつも森が燃えていて、その熱によって種子をひらくマツもある。山を焼くことで環境を更新するいとなみは古くからあったことで、木々が燃えることはただちに破壊を意味しない。それがすこし感動的におもえた。もっとも、不用意に燃やすことはそれとは異なるが…。

地球全体の酸素濃度の変化を観察することによって、どの時代にはどれほどの火災があったかということを検証することができるという。植物が陸上に進出すると酸素は濃くなり、自然発火は増える。落雷があれば容易に火はつくし、落石があって火花が起こればそこから出火することもある。酸素濃度が安定してはじめて、気候帯によって火災を説明できるようになる。なんともスケールの大きな話であった。

アンドリュー・スコット博士がおおくの資料と研究を提供していて、このひとは Fire: A Very Short Introduction を書いて OUP から出版してもいるとあとで知った。

この展示は常設展のいちぶをなしていて、ひとつのチケットで本館をほとんどくまなく見学できた。科学館で哺乳類の模型をながめて、アフリカスイギュウがジョージ・ワシントンによく似ていると話した。