ものしりの友達が教えてくれて、しばらく興味をもちながら手に入れていなかった物理の参考書を買った。
駿台文庫の『新・物理入門』は、高校物理の上級者向けの参考書とされている。しかしそれは端的に難解であるというのではなさそうにみえる。一般の教科書では説明を簡略化してすませるところをそうしないという態度で貫いて、結果として難解になっているようにおもわれる。計算してあらわれた結果を吟味すること。数式による抽象化だけをみて理解した気にならず、原理をよく考えること。それをよくうながしている。
みっつある序文はいずれもおもしろいが、「旧版の序」は物理学は世界を論理的に表現するためのひとつの形式であると宣言したあとで、こうやって学習の動機づけをおこなう。
筆者は、自然に対する物理学的な見方が最も優れた見方だとも、ましてや唯一の見方だとも思わない。しかし物理学が近代において最も成功した学問であり、他の諸学問も多かれ少なかれ物理学に影響されていることは事実だから、その基礎概念と論理構造の初等的部分の理解は、どの自然科学を学ぶためにも、やはり必要とされるであろう。
この教科書を信頼して最後まで読んでみようとおもった。きっとこれはそれに値する。粘り強く読むことを読者に求める本は見返りもおおきい。そんな気がする。
受験生が当然知っているべき公式のほとんどを暗記していない、という不利な条件はあるが、それもひとつひとつここで確認していけばよい。電磁気学で挫折した経験があるので、それをあつかう第5章までいければ幸運だとおもう。そこまでたどり着くことができれば、最後まで読み通せもするとおもう。