最後には大阪から東京までレンタカーで帰ることになった。終わってみればそれに尽きるといって不足ない旅行だった。
朝は堺筋線で日本橋から恵美須町へ。喫茶「いずみ」でモーニング。おいしいハムトースト。続いて新世界の「ぎふや」で煮玉子の串カツなど。快晴でもこごえる寒風のなかを歩いて、西成へ。
三角公園で管を巻いた。炊き出しのボランティアが、最後の2杯をアナウンスしていた。背筋の伸びたおばあさんが歩いてきて、友人のパーマを指指して「薔薇みたいやな!」と。返す刀で「あんたはどんぐり!」とも。しばらくこのひとと話した。というより、彼女があれこれまくしたてるのに耳を傾けた。おしゃれな重ね着に加えて、首にも腕にも大量のアクセサリーをさげていた。75歳であることを示唆しながら、「わたしは19歳!」とも吐いていた。
真昼の飛田新地を通り抜けて、喫茶「カトレア」でホットケーキセット。しかしどの喫茶店もタバコがうずまいている。
天王寺に向かう。途中でアイコスの展示即売をやっていて、友人がワンセット買うのを見届ける。トイレに寄ったすきにはぐれてしまって、御堂筋線改札で合流する。
梅田へ。阪急でおみやげを物色。チーズビスケットというのがおいしそうで小さなセットを購入。東海道新幹線の調子が悪いらしいという第一報があって、まずは帰路の確保をと JR 大阪駅へ。すこし先をみて、16時の指定券を買う。
梅田でやることはもうないので新大阪にいく。コメダでも探して雑談しようとする前に、新幹線改札をみやるとたいへんな混雑になっている。空いている駅で切符を買っておけてよかったね、などといいつつ、ええもんちいを買い足したり、 551 の豚まんに友人が並ぶのを待つ。
ここで一部運休のアナウンスがあった。ぼくたちの切符は無効になった。そのうえ復旧も完了していないという状況。壁沿いに立ってぼんやりしていると、目の前をみるみる人の列が伸びていく。
もう一泊することになるかな、などとのんびりしていたが、友人らは明日はやくに出社しないといけないという。ここでレンタカーで帰るというウルトラC案があがる。にわかに活気づく男子が4人。ことここに至ってなんと楽しいこと!
ふたたび梅田へ。どこも車が出払っている様子があったなか、グランフロントビルのオリックスでセレナの予約が取れた。 18:30 の予約までいくぶん時間があるのは、前の借り手が 18:00 までの利用になっているからだという。ビアホールでソフトドリンクだけを飲みながら、マルゲリータとヴルストを食べる。
夕陽が隠れきったところで梅田の地下を出る。代わる代わる眠りながらハンドルを交換した。三重の湾岸長島から愛知を横断して、静岡の清水までを運転した。愛知の運転は怖いというイメージが先に立っておびえたものの、仕事は果たせた。 PA 内のヤマザキでハムカツロール。ソースが濃くておいしかった。
残りの道程は社内をカラオケのようにして陽気に過ごした。どうしてか誰も眠っていなかった。東名を世田谷でおりて、環七環八をめぐって高円寺にいたった。近所のマルエツでいちばんにおろしてもらい、 2:00 に帰宅。東京も寒く部屋が冷え切っているので、風呂をわかしてあたたまった。
パートナーが遅い時間までメッセージを送ってくれていた。彼女はこの日は学会に登壇していた。その晴れやかな日に不安をあたえてすまないような、しかし案じてくれていることに安心もするような、不思議な幸福があった。