日曜日、池袋の東京建物ブリリアホールにビッグバンドを聴きにでかけた。
狭間美帆さんという名前を初めて聴いたのは大学生のころのはず。以来年を追うごとに名声が大きくなっていくのを見知りして、いつか聴きにいってみたいが、それはアメリカにでも行かないとだめかなあ…とおもっていた。
数ヶ月前に東京フィルとの共演で、中村佳穂さんも招いて演奏をする企画があったのも知っていた。盆で里帰りをする予定があってそれは行けなかった。しかも結局はコロナで寝込んでいたのだった。
それを逃してしまったのが痛ましいなあ、とおもっていたところ、どうやって発見したのかもう覚えていないけれど、デンマークの国営ラジオの楽団の演奏があるというので、あわててチケットを取ったのだった。あれこれ記憶がおぼろげだな…。
ホールはすこしモダンなつくりをしていて、席は鮮やかな赤色だった。隣の席にいた老人に、プログラムはどこで手に入るのかと尋ねられて、入り口のところで配っていましたよと答えた。それからしばらくこのおじいさんの話を聞いていた。ジャズのコンサートに来るのは40年ぶりで、最後にみたのはアート・ペッパーのショウだったこと。その二年後に彼が死んだこと。コルトレーンが大好きだったこと。早稲田の「イントロ」と「コットンクラブ」は昔からずっとあるということ。その日はそこから池袋まで歩いてきたということ。年金ぐらしだからサックスをはじめたいが、家で音は出せないということ。ひとりで登山にいくことが趣味で、そのコツはできるだけひとの多い山を選んでいくことだということ。バードウォッチング用の双眼鏡を使うとソリストがよくみえると、演奏中でも構わずにそれを押し付けるように貸してくれた。
16時に始まった演奏は、インターミッションを挟んで二時間を超えてなお続いた。カーテンコールの途中で抜けてしまった。すこし遅れても謝ればいいはずの予定に妙にあせってしまい、おじいさんと最後に会話をせずに出てしまったことをあとで後悔した。