オレンジのハスラーを友達に借りてもらって、男子4人でキャンプにいった。行きは練馬から関越道。所沢、川越を通って青梅へ。帰りは土砂降り。渋滞を避けて、あきる野、八王子、日野、立川と下道をのぼって、国立府中から新宿まで中央道。

土曜日。奥多摩町と埼玉との県境の峰を車でのぼっていくと、道端に不意にロッジがあらわれる。これが中茶屋キャンプ場川を見下ろす山道をうまく利用して、バンガローとキャンプサイトがある。川をわたったところにも設備があるが、この日は夜から大雨の予報につき休業状態になっている。

とはいえまだ雨は降らないので、きれいな浅い川に足をひたして遊んだ。まわりには背の高い森、背後には川下に向けて背の低い滝が連なっている。森からきこえる虫の声と、滝に水が激しく飲み込まれて落ちていく音。静けさとはほどとおいはずであるのに、人工音でないというだけで耳にやさしく、いつまでも聞いていられる。うるさいのは嫌い、静かなのが好き、と思い込んできたが、たんに音のあるなしで測れるというものではない。もちろん、完璧な沈黙を求めていることはない。

バーベキューサイトも完備。ゴミの分別さえ適切にするという責任だけが与えられて、燃えかすの後始末も調理器具の油落としも、キャンプ場が肩代わりしてくれる。つまりはキャンプというより、アウトドア体験のエンターテインメントというほうが近いかもしれない。それでつまらなくなるはずもない。

秋の山にいるわけで、夜にはもう寒いくらいの温度でさえあるはずなのに、ひとばん焚き火を囲んでいるとずいぶん身体が火照ることになる。真っ暗な山道を最低限の明かりだけで冒険したりして楽しむ。あまり無理はしない分別をもって切り上げて、ちいさなバンガローで軍隊のように雑魚寝する。

日曜日。火を炊き直しててきとうな朝食をしていると、急な土砂降りになる。山道をひっきりなしに雨が打って道のうえに小さな川をつくる。屋根のあるところで後片付けをすませて、車までを一気にわたっても、あっというまにずぶぬれになる。川が増水しているかどうかを見にいく余裕ももたずに撤収する。

車でいちど山を下り、もういちどべつの山道を越えて、温泉施設にむかう。瀬音の湯。ぬるぬるしたお湯は手の平でこすると泡立つ。露天風呂は大雨。サウナのあとの水風呂も露天。静かな水面に大粒の雨がバチバチと叩きつけてはねる珍しい景色をみた。

未就学児が6人くらいつどって、飛び込み、バタ足、その他の傍若無人をはたらいていた。なにせ人数があるから、ひとりを選んで叱るのもまとめて叱るのも収まりがわるく、お犬様もかくやというぐあいに黙って狼藉をみていることしか、大人たちにはできなかった。

温泉の食堂でそばを食って、お土産屋で団子を食って、帰る。高田馬場で車を降ろしてもらう。最寄り駅から家まではふたたびずぶぬれになって歩いて帰る。翌日すこし喉をわるくしたのは雨に打たれたからかもしれない。