京都に一泊した翌々日に発熱した。発熱外来を受診して、陽性の診断を受けた。保健所に連絡して、自宅療養を指示された。

めったにない高熱を経験した。40.5℃に張り付いていっこうに解熱しないとおもわれる時間もあった。気絶するように意識を失って、気がつくと汗まみれになっていたりした。ロキソニンを6時間おきに服用して、3時間の安定と3時間の高熱を丸二日ばかり繰り返した。

高熱はそれで収まりつつも、微熱はその後数日も収まらなかった。咳と喉痛はあとからおって出てきた。微熱は一週間をかけて収まった。気管支炎らしい咳はまだ残っている。

映画やドラマをみるために身体を起こす元気も出なくて、療養中はひたすら活字を読んでいた。京都で読んでいた『ダロウェイ夫人』を読み終えた。そのあとフォークナーの『響きと怒り』を再読した。これは収穫だった。感染していなければまさか読み直すこともなかっただろうとおもう。

発熱があるあいだは苦しかったものの、自宅に閉じこもって療養した時間は静かで豊かだった。発症してしまったものは仕方ないと開き直って、自分本位の時間を過ごした。感染してはいけないという切迫感に張り詰めていた気分が、いざ感染したことによってかえって楽になったような気さえする。そういう心の機微に気がついてバカバカしい気分にもなった。