断片的なエピソードを恣意的にみえるやりかたで接合して長編に仕立てた印象があった。ひとつひとつの断章はおもしろい小話になっているが、全体を統合する構造をつい探してしまい、それがあらわれなかったことで肩透かしを受けた感覚があった。
青春映画の体裁をもっているが、それほど爽やかな作品ではない。甘い情感よりもむしろ、過去のアメリカに向けた情緒と郷愁が勝っていて、カリフォルニアを舞台にして人間を描いたというよりも、群像を利用してカリフォルニアの文化を描いたというほうがしっくりくる。しかしそれにしてもすこし踏み込みが甘く、結果としては恋愛映画とも社会映画ともとれないどうにも宙ぶらりんなトーンになっていたようにおもう。主人公の男女はともに強いエゴを持っていて互いに譲らず、最終的な恋の大団円を正当化するほどの成長を作中で遂げたとは思われなかったし、ベトナム戦争やオイルショックのような社会の状況も、表面的な情報として描かれるのみで深入りはしていなかった。
短編オムニバスとしては悪くはない気もするが、長編としては焦点が定まっていないという感覚がある。『わたしは最悪』でも同じ不満足があった。断片的なイメージを描くのであれば断片のままにとどめておけばよく、無理にプロローグとエピローグを与えて、束ねて総括しようとしなくてよかったんじゃないか。
あるいはポール・トーマス・アンダーソンの新作というので期待のハードルを高くしすぎていたかもしれない。同じくカリフォルニアを舞台にしてしかも時代の設定も近かった『インヒアレント・ヴァイス』のほうが、支離滅裂のなかに喪失や悔恨の情が伺われて好きだった。日本語を脚本に織り込むやりかたもそこからの二番煎じであったが、今回のやり口はシュールではなくカリカチュアに向かっていて、気持ちのいいものではなかった。
劇中にウィングスがかかるのはよかった。しかし続けてデビッド・ボウイがかかるといくぶん興ざめしてしまった。