8時に始業、17時に終業して映画を観に行った。アテネ・フランセに。
早起きに慣れないので、向かう電車で眠気をもよおした。そのコンディションでサイレント映画をみる。これは眠ってしまうかもな。
しかしそれは杞憂だった。おもしろい!
ただならないオーラを持った映画だった。上昇と幸福、下降と悲劇を演じ分ける俳優たちのパワー。身振りと表情のみでそれを伝えることの雄弁さ。強力な緊張感と、ときには圧倒的なホラー。
上映開始とともに真っ暗になる劇場。フィルムが始まっても場内は完全な無音である。椅子のきしみや、近傍の観客の息遣いがかえって映画に臨場感を加える。
シュトロハイムという監督は、本でその名前をみたことがあるだけだった。すでにパブリックドメインであるから、作品をみるだけであれば YouTube で事足りるが、100年前の観客と同じように劇場で息を呑んで鑑賞したことで、ぼく自身が映画史の一部に参加したような錯覚を持っている。
ウィキペディアでシュトロハイムを調べると、代表作に『サンセット大通り』が挙げられている。おや、それが監督作なのであれば実はすでに観たことがあったか? と訝しんでみたところ、出演でのクレジットであった。執事の役と読んでピンときた。彼か!
実のところ、トリナ役の女優が眉をおおきく持ち上げて顔をのけぞらせ、眼をみひらく演技をみて、『サンセット大通り』の狂気がかかった演技を思い出していた。それが空想でなく現につながっていることに魔法を感じる。