もうだめだ! とおもったところから、再起をはかって車を走らせる。その後半の構造は『ドライブ・マイ・カー』とたしかに似ている。しかし似ているところを探すために観ていたのではない。後半だけが見どころだというのでもない。全編通して強力な作品で、4時間の上映をなんの苦もなく過ごした。
役所広司の悩める不器用な男も、繊細で言葉を発さない宮崎あおいも、思春期らしさだけではない暗さを湛えた宮崎将も、いちじるしいパフォーマンスをしている。わかりようもない魂の真意を、どこか空虚な佇まいによって捉えている。どこを切り取っても名場面である。投げやり、徒労、命の軽さ、血縁、わらにもすがる思い、他人のために生きること、新しくやり直すこと。そういうものを新鮮にみせてくれる映画だった。
青山真治監督は、存じ上げていなかった。亡くなられたというニュースによって知って、テアトル新宿での復刻上映で鑑賞した。