同じタイトルの記事を一ヶ月前に書いた。これをきちんと終わらせることができた。

二次と三次のベクトルを図示しながら自然な形で概念を示してくれる。より高い次元への一般化は、それが可能であることだけを簡単に述べて、あくまで低い次元で具体的に考えることを促してくれる。それが目くらましではなくて、一般に高次の行列の計算はコンピューターで演算するものだから、手で計算するのは三次くらいまででよいのだと、ひとまず納得できるアドバイスを提示してくれているのが嬉しい。

大部分は放送大学の「線型代数入門」の講義で既習の範囲であったが、複素数への一般化とジョルダン標準形の導出は未習であった。しかしそれも難なく飲み込むことができた(あるいはそう信じさせてくれた)ので、よいテキストであるとおもう。実際、暗黙の論理でつまずいて読む手が止まることはいちどもなかった。

まえがきにて勧められていたとおり、まずは簡単に通読して、続けてすべての練習問題と演習をノートに手計算するやりかたで取り組んだ。同じ難度の問題を必ず複数個ならべてくれているので、ひとつの問題をわかるまで繰り返し解くやりかたでなく、どんどん先に進みながら理解を頭になじませていくやりかたで勉強することができた。急につまずいてつまらなくなってしまうことを回避するための気の利いた構成術があった。

対角化についてはそれなりに自信を持てるようになった。ジョルダン標準形の解法も、未習で臨んだわりには理解できたほうとおもう。 “張られる空間” というような特殊な用語法も、初見のときにくらべればずいぶん自然に受け入れられるようになった。商空間という概念だけ、このテキストの範囲中ではちょっとわからないところが残ったかもしれない。とはいえ、ひとまず概要はインストールできたので、あとからどうにでもなるだろうと楽観的である。

まえがきによると、ジョルダン標準形でギブアップしてしまう大学生が多く、よくわからないまま卒業してしまう…という話があるらしい。読み始める前は、いったいどれだけ難しいのだろうかとすこし怖気づいていたが、終わってみるとなんということはなかったようにおもう。これもまた、あらかじめハードルを低めにしておいて達成感を感じさせようという構成術なのかもしれないが、嫌な気分はしない。自信はついた。