多読の逆を心がけた一年だった。少ない本をじっくりと読む。そうすることで、かえって知恵は深められたようにおもう。

今年読み上げた本のうち、確かに身になったとおもえるものを列挙する。どれもアカデミズムにおける経歴がたしかな著者/訳者によるものであることに納得感がある。

どれも学部生向けの入門レベルにあたるものであるが、「入門こそ正確であらねば」とする学問的誠実さを強く感じた。定義にごまかしはなく、証明も省略されていない。おそらく、必要以上に丁寧に書いてくれており、期待としてはすべて理解するように要請されているのだとおもう。

大学院レベルであれば多読によりガツガツと知識の幅を広げていくことが必要になるのであろうが、学部生レベルであれば、まずは精読により専門用語と議論の論理に慣れることが第一なのだとおもう。基礎力がつかないままに多読をしても、目が文字の上をすべるだけになりかねない。

商業出版寄りの専門書もいくつか読んだが、印象に残らないものばかりだった。軽く読んだか、じっくり読んだかの違いがそのまま表れているにすぎないといえばそれまでだが、ここには真理も含まれているとおもう。すなわち、簡単な参考書を多く消費するより、重厚な参考書をよく選んで取り組むほうが、身になる。

出版社を吟味して、きちんとした先生が書いたテキストを読むのがいまの僕にとってはより健康そうだ。