カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学 (ブルーバックス)
https://www.amazon.co.jp/dp/4065137438

 簡単な化学から始まり、やがて難しい化学になる。それを元手にして、タンパク質、脂質、糖質というみっつの高分子の多様性をみていく。ここまでが前半である。

 後半は、細胞の観察をおこなう。原核細胞の相対的に単純な構造をみたうえで、真核細胞のいっそう複雑な構造をみる。細胞小器官、細胞外構造、細胞膜をみる。そのご、最後の仕上げとして、細胞間の情報伝達が化学物質(リガンド)の結合をトリガーにおこなわれることをみる。

 生物、あるいは生命維持のメカニズムが、実にシステムのアナロジーでうまく説明できること。ごく表面的に理解したのみではあれ、感動を呼び覚ますには十分であった。 DNA が情報を暗号化して保存し、それを折々に復号・複製する。あるいはそれを設計図にしてタンパク質を産生する。はたまた、ある信号に反応する受容体と反応しない受容体があって、細胞は選択的・特異的に応答をおこなう。ある信号からはじまる反応が、自身の出力を入力にして連鎖的に反応を引き起こすことで、信号が指数的に増幅される。などなど、生命活動の様相がまるで精巧に設計された工学的機械のように描かれる。機械のアナロジーで生命を描写できること。因果としては逆になろうが、そこに興味深さと恐ろしさをないまぜにしたような感慨をもった。

 エラーだらけのシステムと格闘する仕事から離れて、神のみわざと言いたくなるのもうなずける均整美をもった生命というシステムの美しさを学ぶのは法悦である。これだけ完全に近いシステムが僕の身体を駆動しているのに、その僕が生み出す出力の不完全さときたらないな、とシニカルな笑いをついかき立てるところもある。

 精密機器のようでありながら凄まじくダイナミックな、生物学というこの世界への導きとして素晴らしい教科書であるとおもう。この一冊を読めばすべてがわかるようなテキスト、という指向性で書かれている気がする。それも実にアメリカの教科書らしく、好もしい。

 ひとまず後続のテキストも購入する。そして10月からは、放送大学の「初歩からの化学」も履修する。「初歩からの生物学」という講義もあったけれど、生物を知るうえでの下部構造として化学があるようだから、いささか遠回りになっても悪くはない道だろうと思っている。