ある Googler の投稿を読んでいて、見かけた本である。題字のフォント、表紙のデザインなど、飾り気はないのに力強いオーラを持つ装丁がただちに印象に残った。名著という評判も高いおかげで安心して読むことができたし、翻訳も丁寧な印象で、自然に読める心地よさはありがたかった。

Effective C++ 第3版 (ADDISON-WESLEY PROFESSIONAL COMPUTI)

 どのページでも実践的な開発の勘所を完結に提示してくれて、知識として興味深買った。例えば「メンバ関数はカプセル化を弱める」という観点。メンバ関数は private なデータにアクセス可能であるから、カプセル化の観点からは非メンバ関数の方が安定するのだという。自分ではたいしてこだわりも持っていなかったが、言われてみれば理にかなっていて、「明日から使える知識」として印象に残った。

 ただ全体としてはあくまで、C++という言語を主題としているわけだから、そもそも入門したての僕にとってはいくぶん背伸びした内容だったことは否めない。仕事としてC++のプロジェクトに携わっているわけではないから、読んで得た知識を実践にフィードバックする機会もそう多くない。つまり知識の定着という意味でも、短期的に成果を得るということはあまり期待できないということで、いくらか残念に思う。

 現状の僕にとってのC++の用途は、多くとも数百行程度のコードで計算をさせるくらいの使い方にとどまっている。使い捨てのクラスは書いても、長く使われるクラスを設計したことはない。そういった経験不足のせいで、この本を十分に味わいつくすことはまだできないようだ。

 一方で、これからより多くを学んでいくにつれて、わかることがどんどん増えるのだろうなとは期待してしまう。そのためにはますます意識的にテクニックを身につけていけないけれど、そのさきでこそ再読すべき本がこれなのだと思う。そう思って、その機会がやってくるまでひとまずこの本はしまっておく。